マンジャロに惹かれるのは「情弱」でも「貧困層」でもなかった——500人調査が突きつける、私たちの偏見

痩せ薬。マンジャロ、GLP-1、医療ダイエット——テレビをつければ、見ない日はありません。そして、その報道に触れたとき、私たちの頭にはこんなイメージがよぎります。

「ああいうものに飛びつくのは、情報をちゃんと調べない人だろう」「お金に余裕がなくて、楽して痩せたい人だろう」「都会の華やかな夜の世界の人たちでしょう」。

口には出さなくても、どこかでそう思っている。痩せ薬に惹かれる人を、自分とは違う”あちら側”の人間として、無意識に線を引いている。その線引きは、自分は安全な場所にいるという、ささやかな安心すら与えてくれます。

コーチム編集部は、その線引きが本当に正しいのかを確かめたくて、全国の20〜60代500人に調査を行いました。痩せ薬・医療ダイエットに関心を持つ層と、まったく関心のない層を分け、両者が「どんな人なのか」を、学歴・年収・居住地・知識レベルにわたって徹底的に比較したのです。

結果は、予想を、ことごとく裏切りました。正確に言えば、裏切られたのは調査の予想ではありません。裏切られたのは、私たち自身の思い込みです。

この調査が突きつけたこと

  • 年収も学歴も、関心層と無関心層でほぼ「差がなかった」
  • 「情弱だから飛びつく」どころか、薬の限界を正しく理解しているのはむしろ関心層だった
  • たった一つ、明確に違ったのは「属性」ではなく「行動の積極性」だった

本記事は、コーチムが実施したマンジャロ500人意識調査のうち、「痩せ薬に関心を持つのは、どんな人か」という一点に焦点を当てた派生レポートです。私たちが当然のように抱いていた偏見が、データの前で一つずつ崩れていく過程を追います。

目次

調査の概要

本調査は、痩せ薬・医療ダイエット(マンジャロ、GLP-1、脂肪溶解注射など)に対する消費者の認知・意識を測ることを目的に、2026年6月に実施しました。薬の効果や使用を推奨・解説するものではなく、「人々が何をどう認識しているか」を問う社会調査です。

分析では、回答者を2つの層に分けています。痩せ薬の利用を検討した・過去に利用した・現在利用していると答えた「関心層」95名と、検討したこともないと答えた「無関心層」405名です。この2群を様々な角度から突き合わせることで、「関心を持つ人」の輪郭を描き出します。

調査対象 全国の20〜60代の男女
有効回答数 500名(人口構成比に準拠)
調査方法 インターネットアンケート調査(Web回答方式)
実施時期 2026年6月
調査主体 コーチム編集部

偏見1|「貧困層が飛びつく」——では、なぜ高所得層の割合が同じなのか

最初に検証するのは、最も根深い偏見です。「痩せ薬に飛びつくのは、お金に余裕のない人だ」。

世帯年収を比べました。もしこの偏見が正しければ、関心層には低所得者が偏って多く、高所得者は少ないはずです。ところが、結果はこうでした。年収700万円以上の高所得層の割合は、関心層20.0%、無関心層20.2%。差は、わずか0.2ポイント。ほぼ完全に一致しています。

世帯年収 関心層 無関心層
300万円未満 23.2% 32.8%
300万〜500万円未満 36.8% 28.1%
500万〜700万円未満 20.0% 18.8%
700万〜1000万円未満 15.8% 13.3%
1000万円以上 4.2% 6.9%

それどころか、よく見ると逆の構図すら見えてきます。「300万円未満」の低所得層は、関心層23.2%に対して無関心層が32.8%。低所得層は、むしろ無関心層のほうに多かったのです。「お金がないから楽に痩せたい」という物語は、データの中に居場所がありませんでした。

▶ 一行サマリー:痩せ薬に関心を持つ人の高所得層比率(20.0%)は、無関心層(20.2%)とほぼ同一。年収では、まったく説明できなかった。

偏見2|「低学歴が飛びつく」——大卒比率は、ほぼ横並びだった

次の偏見は学歴です。「ちゃんと教育を受けていない人が、よく調べずに手を出すのだろう」。

4年制大学・大学院卒、いわゆる大卒以上の割合を比べると、関心層52.6%、無関心層59.3%。確かに無関心層のほうがやや高いものの、その差は誤差の範囲と言っていい程度です。少なくとも「関心層は際立って低学歴だ」という構図は、まったく見当たりません。中学校卒に至っては、関心層は0.0%、無関心層が1.5%。学歴という物差しでも、両者を分ける線は引けませんでした。

ここまでで2つの偏見が崩れました。けれど、まだ反論はできます。「属性が同じでも、知識が足りないから飛びつくのでは?」と。次は、その核心に踏み込みます。

その前に、ここで一度立ち止まる価値があります。年収も学歴も差がなかった——この「差がない」という結果自体が、実は静かに衝撃的なのです。私たちはあれだけ自信を持って「痩せ薬に飛びつくのは、ああいう人たちだ」と思い描いていた。その確信に、データはたった2つの設問で「根拠がありません」と答えを返してきました。偏見というものは、しばしばこのように、確かめてみると拍子抜けするほど何の裏づけもないまま、私たちの頭の中だけで膨らんでいるのです。

偏見3|「地方の人が飛びつく」——実際は、関心層のほうが”都会”だった

3つ目は、居住地にまつわる偏見です。情報の届きにくい地方の人ほど、流行りに乗りやすいのではないか——。

居住地域の規模を比べると、この想像も裏切られます。東京23区・政令指定都市に住む割合は、関心層33.7%に対し無関心層29.9%。関心層のほうが、むしろ都市部に多い。そして町村部に住む割合は、関心層5.3%に対して無関心層11.4%と、無関心層が倍以上。「地方の人が飛びつく」どころか、構図はきれいに反転していました。

偏見4(核心)|「情弱だから飛びつく」——薬の限界を理解していたのは、むしろ関心層だった

そして、最も強固な偏見にたどり着きます。「結局、情報リテラシーが低いから、痩せ薬なんてものに惹かれるんだ」。これさえ崩せれば、偏見の本丸は陥落します。

痩せ薬の知識を問う設問で検証しました。とりわけ重要なのが、「痩せ薬で減量した後、やめたらどうなるか」という問いです。正解は「多くの人が体重が戻りやすい」——つまり薬は魔法ではなく、やめればリバウンドしうる、という限界の理解です。

この正答率が、衝撃でした。関心層71.6%に対して、無関心層64.0%薬の限界を正しく理解していたのは、無関心層ではなく、関心層のほうだったのです。痩せ薬に興味を持つ人ほど無知だ、という前提は、ここで完全に逆転します。彼らは「楽に痩せられる」と夢を見て飛びついているのではない。やめれば戻ることを知ったうえで、それでも関心を持っているのです。

考えてみれば、これは奇妙なことではありません。何かに関心を持った人間は、自然とそれについて調べます。痩せ薬が気になれば、ニュースを読み、口コミを探し、リスクの情報にも触れる。その過程で、知識は否応なく蓄積されていく。「関心がある」ことと「無知である」ことは、本来むしろ相反するのです。にもかかわらず私たちは、両者をひとまとめにして「情弱が飛びつく」という像を作り上げていました。

マンジャロが何の薬として承認されているか、という基礎知識の正答率でも、関心層56.8%・無関心層60.5%とほぼ拮抗しており、関心層が劣るという事実はありません。どの知識を取っても、関心層は無関心層と同等か、それ以上に「わかっている」のです。

▶ 一行サマリー:「やめれば戻る」という薬の限界を理解していたのは、関心層71.6%・無関心層64.0%。”情弱だから飛びつく”は、データ上むしろ逆だった。

編集部の見方
危険な入手経路への警戒も、両層で共通していました。「SNS・フリマでの個人売買」や「海外からの個人輸入」を安全だと考える人は、関心層でもわずか1%前後。関心があるからといって、リスクに無防備なわけではないのです。「情弱が無防備に飛びつく」という像は、どの角度から見ても結ばれませんでした。

では、何が彼らを分けたのか——たった一つ残った、決定的な違い

年収も、学歴も、居住地も、知識レベルも、関心層と無関心層を分けることはできませんでした。私たちが偏見の根拠にしてきた属性は、一つ残らず空振りに終わったのです。

では、両者を分けるものは、本当に何もないのか。最後に一つだけ、はっきりとした違いが現れました。それは「どんな人か」ではなく、「どう振る舞う人か」——行動様式です。

あてはまる行動 関心層 無関心層
新しい商品やトレンドを人より早く取り入れる 18.9% 8.4%
過去1年で話題の健康法・ダイエット法を試した 25.3% 10.4%
健康・美容に月5,000円以上使っている 16.8% 10.9%
健康情報を主にSNSで調べる 57.9% 39.8%
いずれも当てはまらない 16.8% 42.5%

差は、一目瞭然でした。「新しいものを人より早く取り入れる」関心層18.9%に対し無関心層8.4%、実に2倍以上。「話題の健康法を試した」に至っては25.3%対10.4%。健康への投資も、能動的な情報収集も、すべて関心層が大きく上回ります。そして象徴的なのが最終行——「いずれも当てはまらない」と答えた人は、無関心層では42.5%にのぼるのに、関心層ではわずか16.8%。無関心層の4割が”動かない人”であるのに対し、関心層のほとんどは”動く人”だったのです。

つまり、痩せ薬に惹かれる人の正体は、こうでした。情報弱者でも、貧困層でもない。むしろ情報感度が高く、健康に投資を惜しまず、新しい選択肢にいち早く手を伸ばす——いわば「アーリーアダプター」だったのです。

▶ 一行サマリー:関心層と無関心層を分けた唯一の違いは「行動の早さ」。新しいものを早く試す人は約2倍、何も行動しない人は無関心層に4割超。

まとめ|偏見は「属性」に向けられる。だが、人を動かしていたのは「行動」だった

私たちは、痩せ薬に惹かれる人を「情弱」「貧困層」と、属性で値踏みしてきました。しかし500人のデータは、その属性のどれ一つとして、関心の有無を説明できないと告げています。年収も学歴も居住地も知識も、関心層と無関心層をまったく分けなかった。それどころか、薬の限界を理解していたのは関心層のほうでした。

関心を分けていたのは、その人が「何者であるか」ではなく、「どう生きているか」——新しいものへ踏み出す積極性でした。痩せ薬への関心は、無知や貧しさの表れではなく、行動の早さの表れだった。これが、偏見を一つずつ剥がした先に残った、たった一つの事実です。私たちが誰かに貼ろうとしていたレッテルは、最後まで、貼る相手を見つけられませんでした。

もちろん、本調査が示すのは相関であって、因果ではありません。「アーリーアダプターだから痩せ薬に惹かれる」のか、それとも別の要因が両者を同時に生んでいるのかは、このデータだけでは断定できません。ただ、少なくとも「痩せ薬に飛びつくのは”あちら側”の人だ」という安直な線引きは、もう成り立たないということだけは、はっきりしています。

なお、こうした「新しい選択肢に手を伸ばす」動機の根には、しばしば「自力では続かなかった」という挫折経験があります。その心理については、コーチム編集部がなぜ多くの人がダイエットに失敗するのかという記事で別途掘り下げています。痩せ薬に惹かれる心理の背景として、あわせてお読みいただければと思います。

メディア・記者の方へ|引用にお使いいただける見出し

本調査のデータは、出典を明記いただければ自由に引用・転載いただけます。記事化の際にお使いいただける見出し例を用意しました。

  • あなたが痩せ薬の利用者に抱くイメージ、500人調査で全部外れました
  • 痩せ薬に飛びつく人の”年収”を調べたら、予想は完全に裏切られた
  • 「情弱が飛びつく」と思ってた? 薬の限界を理解してたのは関心層のほうだった
  • 高所得層の割合「20.0% vs 20.2%」——痩せ薬への関心は、年収と無関係だった
  • 痩せ薬に惹かれる人の正体は、たった一つの”ある共通点”で説明できた
  • 「地方の人が飛びつく」は逆だった——関心層のほうが都会に住んでいる
  • 痩せ薬への関心を分けたのは、年収でも学歴でもなく「行動の早さ」だった
  • 痩せ薬に惹かれるのは”情弱”でも”貧困層”でもない——500人調査が示す実像

本調査の引用について

本記事および調査データを引用される際は、以下の出典を明記してください。

出典:コーチム編集部「マンジャロ500人意識調査」
URL:https://coaching-by-web.com/research/manjaro-survey-2026/

※本調査は消費者の意識・認知を調査したものであり、特定の商品・薬の効果や使用を推奨・解説するものではありません。掲載データは相関を示すものであり、因果関係を断定するものではありません。関心層(n=95)は無関心層(n=405)に比べ標本数が小さく、細かな数値差については参考値として扱っています。

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この記事を書いた人

コーチム編集長。複数の大手フィットネスジムで挫折後、自己流(通勤運動・自重トレ・AI食事管理)で3ヶ月10kg減量を達成。さらにパーソナルトレーニングの指導で追加5kg減を実現し、専門指導の価値を実感。NSCA-CPT取得。特定のジムと利害関係を持たず、「続けられるパーソナルジム選び」をテーマに中立的な立場で発信。

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