2021年、パーソナルジム業界には「伸びているブランド」がいくつもありました。当時の業界マップを見ると、RIZAPと24/7ワークアウトが横ばいから微減に転じるなか、AppleGYM、BEYOND、Chicken Gym、MIYAZAKI GYM、REVIASの5社が店舗数を増やしていたと記録されています。
5年後の2026年、この5社は同じ場所にいません。177店舗まで拡大したブランドがあり、3店舗まで縮小したブランドがあります。同じ時期に都心一等地で11店舗を展開していた別のブランドは、2026年6月に破産しました。
本記事は、この差を店舗数という一点で追跡した記録です。原因の分析や経営状態の評価は行いません。確認できた数字と、その出所だけを並べます。
この記事のデータについて
先に、データの出所と限界を明示します。
店舗数の出典
- BEYOND(177店舗)・AppleGYM(60店舗)・UNDEUX SUPERBODY(50店舗)・Dr.トレーニング(36店舗)・B CONCEPT(21店舗)・RIZAP(103店舗):コーチム編集部が各ブランドのGoogleクチコミを店舗単位で集計する過程で数えた実測値です。集計時点はブランドごとに異なり、2026年5月〜7月にかけて確認しています。公式サイトの店舗一覧に掲載があり、かつGoogleマップ上に店舗登録が確認できたものを対象としました。
- MIYAZAKI GYM(約45店舗):同社の公式サイトに2026年3月18日付で「45店舗の規模になり」との記述があります。編集部による実測ではありません。
- Chicken Gym(3店舗):公式サイトの店舗一覧(2026年7月時点/池袋・町田・岡山)。
- BVEATS:2022年1月の自社プレスリリースに「都内11店舗」と明記。破産直前の公式サイトには4店舗が掲載されていました。
- REVIAS:2021年時点で拡大していたと記録されていますが、現在の店舗数を公式サイトから確認できませんでした。本記事では数字を示しません。
2021年時点の記録について
本記事の起点となる「2021年に拡大していた5ブランド」は、パーソナルジム運営者が公開している業界マップ(2021年11月時点)の記述に基づきます。第三者による集計であり、各社の公式発表ではありません。
倒産・登記情報について
法人の破産・清算に関する記述は、東京商工リサーチによる公表情報および各報道、ならびに国税庁法人番号公表サイトに基づく登記情報です。登記上の事実のみを記載し、その理由・背景・経営状態については一切の推測を行いません。
とりわけ、店舗数の減少や法人の登記閉鎖は、経営破綻を意味するとは限りません。事業譲渡、グループ内再編、戦略的な店舗整理など、複数の可能性があります。本記事はそのいずれかを示唆するものではありません。
2021年、同じように拡大していた5つのブランド
パーソナルジムの店舗数を継続的に集計している公的な統計は存在しません。そのため、当時の状況を知る手がかりは、業界関係者による民間の集計に限られます。
2021年11月時点の業界マップによれば、当時の勢力図はこうでした。
- RIZAP:129店舗(前年から横ばい)
- 24/7ワークアウト:66店舗(前年69店舗から微減)
- AppleGYM、BEYOND、Chicken Gym、MIYAZAKI GYM、REVIAS:いずれも店舗数を増加
この集計を行った運営者は、「RIZAPや24/7ワークアウトよりも少し安い、2ヶ月15万円ほどの価格帯のジムが成功している」と分析していました。当時、伸びていた5社を分ける材料は、外形上ほとんど見当たりません。いずれも短期集中型で、いずれも大手より安く、いずれも出店を続けていました。
同じ頃、もうひとつのブランドが都心で拡大していました。BVEATSです。2018年8月に代官山の1店舗から始まり、2022年1月時点で都内11店舗(代官山、恵比寿、広尾、中目黒、目黒、渋谷、新宿、原宿、麻布、麻布十番ほか)を展開していると、同社は自らプレスリリースで公表しています。月額3万円台の通い放題という価格設定で、広告を打たずに会員数を伸ばしたと説明されていました。
5年後:BEYOND 177店舗、Chicken Gym 3店舗
2026年7月時点の店舗数を、同じ5ブランドについて確認しました。

| ブランド | 2021年 | 2026年 | 出典 |
|---|---|---|---|
| BEYOND | 拡大中 | 177店舗 | 編集部実測 |
| MIYAZAKI GYM | 拡大中 | 約45店舗 | 公式サイト(2026年3月) |
| AppleGYM | 拡大中 | 60店舗 | 編集部実測 |
| Chicken Gym | 拡大中 | 3店舗 | 公式店舗一覧 |
| REVIAS | 拡大中 | 確認できず | — |
| (参考)BVEATS | 11店舗(2022年1月) | 0店舗 | 破産により全店閉鎖 |
| (参考)RIZAP | 129店舗 | 103店舗 | 編集部実測 |
5年前、この5社の差は見えませんでした。現在、最大と最小のあいだには59倍の開きがあります。
ここから先は、確認できた事実を時系列で並べます。各社の経営判断の当否や、財務の健全性について、本記事は評価を行いません。
BVEATS:11店舗から0へ
BVEATS株式会社は、2026年6月29日に東京地方裁判所へ破産を申請しました。負債総額は約2億3,000万円と報じられています。
公開情報から確認できる推移は、以下の通りです。

| 時期 | 店舗数 | 財務 |
|---|---|---|
| 2018年8月 | 1(代官山) | — |
| 2022年1月 | 11(自社発表) | 2022年11月期 売上高 4億168万円 |
| — | — | 2023年11月期 債務超過 1億3,141万円 |
| 破産申請直前 | 4(公式サイト掲載) | 2025年11月期 売上高 1億2,000万円 |
| 2026年6月29日 | 0 | 破産申請・負債 約2億3,000万円 |
店舗数のピークから4年で、事業は消滅しました。売上高が4億円台から1億円台へ縮小する過程で、11店舗のうち7店舗が閉鎖されています。
同社代表は破産申請にあたり、月3万円で通い放題のパーソナルジムとして展開してきたものの、多様化するフィットネス業界のなかで競争力を維持できず、会員数の減少を止められなかったと説明しています。報道では、大手が低価格帯のトレーニングジムの展開を加速させたことが競争激化の背景として挙げられています。
注意すべきは、同社が不採算店舗の閉鎖を実行していたという点です。11店舗から4店舗への縮小は、破産の結果ではなく、破産に至る過程で行われた措置でした。それでも債務超過は解消されませんでした。
Chicken Gym:30店舗超から3店舗へ
Chicken Gymは、2020年代前半に全国へ急速に出店したブランドです。2023年の業界向け記事は、その拡大の手法を「積極的なWEB広告施策と、RIZAPなどの店舗の居抜き物件に入居することで店舗数を短期間で拡大した」と記録しています。
その後、確認できる事実は以下の通りです。
- 2021年12月:池袋店・さんすて倉敷店がオープン(公式お知らせ)
- 2024年2月29日:さんすて福山店が閉店(施設側の告知)
- 2025年7月1日:株式会社CHICKEN GYM(法人番号6011001126422)の登記が閉鎖(国税庁法人番号公表サイト)
- 2026年7月時点:公式サイトの店舗一覧は池袋店・町田店・岡山店の3店舗。運営会社は株式会社クリアと記載
なお、株式会社CHICKEN GYMは2019年2月に法人番号が指定された法人で、当初の商号は株式会社メンズパートナーでした。2020年4月に商号を変更し、2021年4月に本店を移転しています。
登記の閉鎖が何を意味するかは、本記事では判断しません。登記閉鎖は、清算結了、合併による消滅、破産手続の終結など複数の事由で発生します。事業譲渡にともなう旧法人の整理も、企業再編として一般的に行われるものです。現に、Chicken Gymというブランドは3店舗で営業を継続しています。
確認できるのは、拡大期に30店舗規模だったブランドが、現在は3店舗で運営されているという事実だけです。
BVEATSと並べたとき、ひとつの対比が浮かびます。BVEATSは11店舗を4店舗まで減らし、それでも間に合いませんでした。Chicken Gymは30店舗超を3店舗まで減らし、営業を続けています。同じ「縮小」でも、結果が分かれています。その理由を説明する材料を、本記事は持ちません。
MIYAZAKI GYM:外部資本なしで約45店舗
2021年に拡大していた5社のうち、最も店舗数を伸ばした一社がMIYAZAKI GYMです。同社は2026年3月の自社サイト内で「45店舗の規模になり」と記しています。
同社は公式サイトで、自らの経営体制をこう説明しています。2013年の創業以来、実質無借金経営であり、代表が100%の株式を保有したまま外部からの資金が入っていない体制であること。そして「大手や高いジムは広告や店舗にお金をかけており、安いジムは新人トレーナーが多くなる」としたうえで、自社はトレーナーと器具に費用をかけ、店舗の広さや豪華さには投じないという方針を掲げていること。
これは同社自身の説明であり、編集部が財務を検証したものではありません。ただし、拡大の原資が外部資本や借入ではないという点は、他社との比較において記録に値する差異です。
本記事は「無借金経営だから生き残った」とは主張しません。因果関係を示す材料がないためです。
統計の空白:「パーソナルジムの倒産件数」は誰も持っていない
ここまで個別ブランドを追ってきましたが、業界全体の輪郭を知りたい場合、参照できる統計には制約があります。
東京商工リサーチは、フィットネスクラブの倒産動向を継続的に集計しています。2023年度(2023年4月〜2024年2月)の倒産は28件に達し、それまで最多だった2022年度の16件を上回って、1998年の統計開始以来の過去最多を記録しました。28件のうち販売不振が20件を占め、28件すべてが資本金1億円未満の事業者でした。形態は破産27件、特別清算1件と、すべてが消滅型の倒産です。
ただし、この調査の対象は日本産業分類における「フィットネスクラブ」の倒産(負債1,000万円以上)です。総合型スポーツクラブ、24時間ジム、ヨガスタジオ、パーソナルジムが同じ分類に含まれます。
つまり、「パーソナルジムが年に何件潰れたか」を示す公的な統計は、存在しません。

これは、業界を論じる際の構造的な制約です。市場規模は調査会社が発表し、倒産件数は信用調査会社が発表しますが、その中間にある「どのブランドが、いつ、どれだけ拡大し、どれだけ縮小したか」を追跡した記録は、どこにも蓄積されていません。本記事が店舗数という単純な指標にこだわるのは、そのためです。
参考:確認できたフィットネス関連事業者の倒産事例
以下は、報道および公表情報から確認できた事例です。パーソナルジムに限定したものではなく、フィットネスクラブ・スポーツクラブ・ヨガスタジオの運営会社を含みます。網羅性は担保していません。
| 社名・ブランド | 時期 | 形態 | 負債 |
|---|---|---|---|
| BVEATS(株)/パーソナルジム | 2026年6月 | 破産申請 | 約2億3,000万円 |
| (株)プレミネント/フィットネスクラブ | 2026年4月 | 特別清算開始 | — |
| (株)ヨギー/ヨガ・ピラティススタジオ | 2025年8月 | 破産開始 | 約6億2,000万円 |
| (株)ティーフィールド/スポーツジム | 2024年11月 | 破産決定 | 約3億円 |
| エポックスポーツクラブ/スポーツジム | 2023年5月 | 破産開始決定 | — |
| 滝川スポーツクラブサンテ/スポーツクラブ | 2022年1月 | 破産申請 | 約2億円 |
| (株)アマン/フィットネスクラブ | 2020年9月 | 自己破産申請 | 約3億円 |
このうち(株)ヨギーの事例は、利用者への影響という観点で示唆的です。報道によれば債権者は約2,500名にのぼり、そのうち2,200名超が一般利用者だったとされています。前払いの月謝や回数券が、債権として残った形です。
この記事について
本記事は、パーソナルジムの拡大と撤退を店舗数で追跡する試みです。新たな出店・撤退・倒産が確認され次第、追記・更新します。
データの誤りや、記載すべき事例のご指摘は歓迎します。とくにREVIASの現在の店舗数、およびAppleGYMの総店舗数については、より正確な情報をお持ちの方からのご連絡をお待ちしています。
市場規模や成長率については、パーソナルジム市場の規模と構造にまとめています。本記事は、その市場のなかで個々のブランドに何が起きたかを扱うものです。
図版・データの引用について
本記事の図版およびデータは、出典の明記と本記事へのリンクを条件に、報道・研究・業界資料での転載を許諾します。事前のご連絡は不要です。
記載例:
出典:コーチム「パーソナルジムの拡大と撤退|2021年に伸びていた5ブランドの5年後を追跡」
https://coaching-by-web.com/research/personal-gym-expansion-and-exit-2026/
ただし、本記事の数値を用いて特定の事業者の経営状態を評価・論評する場合は、本記事が経営状態について一切の判断を行っていない点にご留意ください。店舗数の増減および法人の登記閉鎖は、それ単独で経営の健全性を示す指標ではありません。
※本記事の店舗数のうち「編集部実測」と記したものは、各ブランドの公式店舗一覧およびGoogleマップ上の店舗登録を照合して数えたものです。集計時点はブランドにより2026年5月〜7月と幅があります。「約」を付した数値は、公式発表の引用であり編集部の実測ではありません。倒産・登記に関する記述は、東京商工リサーチによる公表情報、各報道、および国税庁法人番号公表サイトに基づきます。登記閉鎖・店舗数の減少は、それ自体が経営破綻を意味するものではありません。本記事は特定の事業者の経営状態について評価・推測を行うものではなく、公表された事実の記録を目的としています。
