パーソナルトレーナーの養成スクールは、半年で70〜80万円ほどかかります。
週1回、4時間。半年通って、NSCA-CPTに合格する。プロフィールの一番上に、その資格名を書く。
そして、お客さんがクチコミを書いてくれます。
「丁寧に教えてくれました」
資格の話は、一行もありません。
これは1人の話ではありませんでした。パーソナルジム8ブランド823店舗のクチコミ3,997件を数えたところ、資格の名前を書いた人は21人。190人に1人でした。
じゃあ、何なら書かれるのか
3,997件を分類しました。「10人が書いたら何人が触れるか」に直します。
| 書かれた内容 | 10人のうち | 実際の人数 |
|---|---|---|
| 「丁寧だった」「優しかった」 | 7人 | 2,901人 |
| 担当トレーナーのこと | 7人 | 2,784人 |
| 「続けられた」「楽しかった」 | 5人 | 1,893人 |
| 痩せた・体が変わった | 4人 | 1,796人 |
| 説明が分かりやすい | 3人 | 1,089人 |
| 自分に合わせてくれた | 3人 | 1,013人 |
| 安心して任せられた | 2人 | 893人 |
| 知識が豊富だった | 2人 | 698人 |
| 料金のこと | 1人 | 422人 |
| 大会・コンテストの実績 | 0人 | 71人 |
| 資格の名前 | 0人 | 21人 |
1位は「丁寧だった」で2,901人。10人に7人です。
資格は、10人集めても0人。190人集めて、ようやく1人。

人柄のほうが、138倍書かれています。
プロフィールの一番上に書くものが、一番下だった
並べ直すと、こうなります。
| トレーナーが掲げるもの | ジム利用者が書くもの | |
|---|---|---|
| 場所 | プロフィール欄 | クチコミ欄 |
| 中身 | 資格名・大会実績・経歴 | 丁寧さ・分かりやすさ・続けられたこと |
| 人数 | 21人 | 2,901人 |
掲げている場所と、評価される場所が、まったく違います。
ここまで読むと、こう思えてきます。
「じゃあ、あの半年は何だったのか」
78万円と、土曜の4時間を半年。700ページのテキスト。それが190人に1人にしか届いていない。
本当にそうなのか、もう一段調べました。
本当に、学んだことは無駄だったのか
スクールで何を学ぶのかを、確認します。
NSCA-CPTの試験に出るのは、この4つです。
- お客さんとの面談と評価
- メニューの組み方
- エクササイズのやり方(解剖学・正しいフォーム・補助の方法)
- 安全性、緊急時の手順
筋肉の名前を覚える試験ではありません。話をどう聞くか。メニューをどう組むか。どうやってケガをさせないか。
つまり、ほとんどが接客の技術です。
では、この4つはクチコミに出てこないのか。
数えたら、4つとも書かれていた
| 学んだこと | クチコミでの書かれ方 | 書いた人数 |
|---|---|---|
| エクササイズのやり方 | 「フォームを見てくれる」 | 1,082人 |
| 安全性・緊急時の手順 | 「無理がなかった」「体調に合わせて」 | 1,025人 |
| メニューの組み方 | 「メニューを組んでくれた」 | 790人 |
| 面談と評価 | 「目標を聞いてくれた」 | 311人 |
| 資格の名前 | 「NSCA」「有資格者」 | 21人 |

全部、書かれていました。
「安全性、緊急時の手順」に触れた人は1,025人。実際の文面はこうです。
毎回トレーニング前に体調を確認してくださり、その日の状態に合わせて内容を調整してもらえるので安心です。
「面談と評価」は311人。
自分がどのようになりたいのか丁寧にヒアリングをして頂き、無理なくステップアップしながらトレーニングを受けられています。
「メニューの組み方」は790人。
目的に合わせてメニューを組んでくれるので、無理なく続けられる。
3つとも、スクールで学ぶ内容そのものです。
ただし、どれにも「資格」という言葉は出てきません。
学んだことは、届いていた
整理します。
- 学んだことを書いた人:311人〜1,082人
- 資格の名前を書いた人:21人
無駄ではありませんでした。届いていました。
ただし、こういう形で。
| 身につけたこと | ジム利用者の言葉 |
|---|---|
| 安全管理 | 「体調を聞いてくれた」 |
| 面談と評価 | 「目標を聞いてくれた」 |
| プログラム設計 | 「メニューを組んでくれた」 |
| エクササイズ指導 | 「フォームを直してもらえた」 |
同じことを指しています。言い方が違うだけです。
落ちていたのは、資格の名前だけでした。
なぜ、名前だけが落ちるのか
書けないからです。
NSCA-CPTがどれくらい難しいのか、ジム利用者は知りません。合格率も、テキストの厚さも、勉強時間も知らない。だから「NSCA-CPTを持っていて良かった」とは書けません。書きようがない。
でも「体調を聞いてもらえた」は書けます。自分の身に起きたことだからです。
クチコミに出てくるかどうかは、すごいかどうかではありませんでした。その人に書けるかどうかです。
短いクチコミには、専門的な話が残らない
| クチコミの長さ | 件数 | 「丁寧だった」 | 「知識が豊富」 |
|---|---|---|---|
| 100字未満 | 585件 | 10人中6人 | 10人中0.6人 |
| 100〜299字 | 2,515件 | 10人中7人 | 10人中1.6人 |
| 300字以上 | 897件 | 10人中8人 | 10人中3人 |
短いクチコミでは、知識の話はほとんど出ません。10人に0.6人です。
一方「丁寧だった」は、短くても6人。長くても8人。あまり動きません。
削られるのは専門性。最後まで残るのは、接し方。
そしてクチコミの半分は、196字より短い。
料金の話も、10人に1人しか書かない
料金に触れたのは422人。10人に1人です。
金額は数字で書いてあります。誰でも読めます。それでも書かれない。
理由は2つ考えられます。どちらが主かは、このデータでは分かりません。
1つ目:比べる相手がいない。パーソナルジムを2社も3社も契約する人はほとんどいません。1社しか知らなければ、高いのか安いのか分からず、書けない。
2つ目:もう払っている。契約した時点で金額には納得しています。通い始めた後の感想では、話題になりません。
選ばれていたのは、どんな人か
3,997件から見えたのは、これです。
選ばれていたのは、資格を持っている人ではありませんでした。
学んだことを、ジム利用者に伝わる形でやっていた人です。
体調を聞く。目標を聞く。メニューを組む。フォームを直す。全部、スクールで習うことです。それを実際にやった人が、「丁寧だった」と書かれていました。
養成スクールの多くが、資格取得だけでなく就職支援と、集客・接客の指導を掲げています。この構造と一致します。学ぶだけでは足りず、使えるかどうかが問われる。
最後に、資格そのものの位置づけです。
資格は、学んだことの証明です。ただし、それを証明する相手はジム利用者ではありません。
就職先のジムには、資格が要ります。スクールの修了にも要ります。自分が何を学んだかの整理にも要ります。
けれどジム利用者は、資格を判定できません。判定できるのは、目の前で何をしてもらえたかだけです。
集めたものと、この記事の限界
| ブランド | 店舗数 | 集めたクチコミ |
|---|---|---|
| かたぎり塾 | 320 | 1,518 |
| BEYOND | 177 | 885 |
| ライザップ | 103 | 515 |
| AppleGYM | 60 | 300 |
| THE PERSONAL GYM | 57 | 275 |
| UNDEUX SUPERBODY | 50 | 245 |
| Dr.トレーニング | 36 | 169 |
| ビーコンセプト | 20 | 90 |
| 合計 | 823 | 3,997 |
本文の長さは平均229字、真ん中が196字。資格の判定には、次の言葉を使いました。NSCA/NESTA/JATI/NASM/CPT/健康運動指導士/理学療法士/管理栄養士/柔道整復/鍼灸/国家資格/有資格/資格を持/資格保有/資格をお持ち。「認定」「プロ」のように他の語に紛れやすいものは除いています。
この記事の限界
- 全部は集められていません。この8ブランドに投稿されたクチコミは、全部で55,194件あります。本文を取れたのは3,997件。14件に1件です
- 良い評価に偏っています。どのクチコミが代表として表示されるかはGoogle側の仕組みによります。不満の声は少なく出ます
- 言葉の一致で数えています。文脈は見ていません。「知識がなかった」という悪い意味の文も、知識への言及として数えられます
- 学んだこととの対応は、この記事の解釈です。「体調を聞いてくれた」と書いた人が、資格で学んだ対応を受けたのかどうかは、クチコミからは分かりません
- 書かれないことは、見られていないことではありません。資格を確認してから契約し、クチコミには書かなかった人は、ここには出てきません
- 集客への効果は測っていません。資格の有無で客数がどう変わるかは、この集計では分かりません
- 8ブランドだけです。個人経営のジムは入っていません。全国のパーソナルジムは2,368施設とされ、823店はその一部です
データの引用について
この記事の数値・表・図は、出典を明記のうえ自由にお使いいただけます。以下の文をそのままお使いいただけます。
パーソナルジム比較メディア「コーチム」が、パーソナルジム8ブランド823店舗のクチコミ3,997件を分類したところ、トレーナーの資格名に触れた記述は21件(190人に1人)にとどまる一方、丁寧さ・人柄に触れた記述は2,901件(10人に7人)にのぼりました。ただし資格試験の出題分野にあたる内容は、エクササイズ指導1,082件、安全・体調への配慮1,025件、メニュー設計790件、面談311件と、それぞれ別の言葉で現れていました。(出典:コーチム「ジム利用者が見ているのは、資格ではなかった」https://coaching-by-web.com/research/personal-gym-review-analysis-2026/)
数値の一部だけを引用される場合も、上記のアドレスを出典として明記してください。図はそのままご利用いただけます。
まとめ
823店・3,997件を数えて分かったことです。
- 資格の名前を書いた人:21人(190人に1人)
- 「丁寧だった」と書いた人:2,901人(10人に7人)
- 学んだことに触れた人:311人〜1,082人
学んだことは、届いていました。名前だけが、届いていなかった。
選ばれていたのは、資格を持っている人ではありません。学んだことを、ジム利用者に伝わる形でやっていた人です。
