高額なパーソナルジムの契約を前にして「ライザップ 経営 やばい」と検索する人が知りたいことは、ひとつだと思います。途中で潰れないか。
50万円を分割で払う契約を結ぼうとしているときに、その会社が数年後も存在しているかどうかは、トレーナーの質や食事指導の内容と同じくらい重要です。
この記事では、RIZAPグループが公表している決算数字だけを使って、その問いに答えます。感想や噂は扱いません。上場企業なので、経営状態は誰でも確認できる形で開示されています。
先に結論を書きます。直近の決算に、短期的な倒産リスクを示す数字は出ていません。ただし、好調なのはchocoZAPであって、パーソナルジムのRIZAPそのものではありません。ここが分かれ目です。
2026年3月期の決算:営業利益が約6倍
2026年5月14日に発表された2026年3月期の連結決算は、以下のとおりです。
| 項目 | 2026年3月期 | 前期比 |
|---|---|---|
| 売上収益 | 1,672.57億円 | 2.2%減 |
| 営業利益 | 110.86億円 | 488.9%増 |
| 現金及び現金同等物 | 290.67億円 | 増加 |
| 期末配当 | 1株0.67円 | 8期ぶり復配 |
営業利益は19億円から111億円へ、約6倍になっています。連結フリーキャッシュフローは3年で371億円改善し、chocoZAP事業開始からの通算で263億円の超過を達成。これにより実質無借金経営を実現したと説明されています。
8期ぶりの復配というのは、それだけ長く配当を出せない状態が続いていたということでもあります。裏を返せば、「配当を出せる状態に戻った」という会社側の判断が示されたのが2026年5月です。
2027年3月期の予想は、売上収益1,800億円(7.6%増)、営業利益120億〜160億円。過去最高益の更新を目指すとしています。
ただし、稼いでいるのはchocoZAPです
ここが、この記事で最も伝えたい点です。
chocoZAP事業は、グループ全体の営業利益の50%超を占めています。前年同期比で18倍の営業利益を達成したと会社側は説明しています。
chocoZAPは全国1,800店舗以上、会員数110万人。月額3,000円台の無人ジムで、定期巡回スタッフによる省人運営、清掃水準の最適化、内製化による外注費削減、生成AIとIoT遠隔システムの活用でコストを圧縮したことが増益の要因とされています。
つまり、グループの利益構造は「無人・低単価・多店舗」に移っています。マンツーマンで高額なパーソナルトレーニングを提供するRIZAP本体とは、ビジネスモデルが正反対です。
この構造変化は業界全体でも起きていて、新規出店の主役が24時間型セルフジムとマシンピラティスに移っていることはパーソナルジム市場規模・店舗数レポート2026でも扱いました。RIZAPグループの決算は、その流れを企業側から裏付けています。
四半期ごとの積み上がり方
通期の数字だけを見ると急回復に見えますが、四半期の推移を追うと、改善が段階的に進んだことが分かります。
| 期間 | 売上収益 | 営業利益 |
|---|---|---|
| 第1四半期(2025年4〜6月) | 399.15億円(1.3%減) | 4.08億円(前年同期は28.84億円の損失) |
| 第3四半期累計(2025年4〜12月) | 1,245億円(3.0%減) | 76.88億円(前年同期比15倍) |
| 通期(2025年4月〜2026年3月) | 1,672.57億円(2.2%減) | 110.86億円(488.9%増) |
第1四半期の営業黒字4.08億円は、4期ぶりの第1四半期黒字でした。RIZAPグループは下期に利益が偏る事業構造だと会社側が説明しており、その構造の中で第1四半期に黒字を出せたこと自体が転換点として位置づけられています。
第3四半期累計の76.88億円のうち、chocoZAP事業は46億円。前年同期比34倍で、44.8億円の増益でした。グループの増益幅のほぼ全部が、chocoZAP1事業から出ています。
売上はどの四半期も前年割れが続いています。第1四半期はchocoZAPの会員数減少とアパレル事業の天候不順、通期でも2.2%減。収益改善は、売上を伸ばしたのではなく、コストを削って作られたものです。会社側も、出店数と広告宣伝費の抑制、株主優待・法人会員トライアルの制度見直しを実施したと明記しています。
2025年5月、RIZAP株式会社への債権放棄が開示された
もうひとつ、契約を検討している人が知っておくべき事実があります。
RIZAPグループは2025年5月15日付で、RIZAP株式会社に対する債権放棄を開示しました。これにより2026年3月期第1四半期の連結決算で、親会社の所有者に帰属する四半期損失に合計58.78億円の一過性のマイナス影響が生じています。
会社側はこれを一過性であり、事業の実態や収益力には影響しないと説明しています。実際、同じ四半期で営業利益は4.08億円の黒字(前年同期は28.84億円の損失)に転じており、4期ぶりの第1四半期黒字でした。
ただし、債権放棄という措置が取られたという事実は残ります。グループが子会社の債務を帳消しにする必要があったということです。
これをどう読むかは、立場によって変わります。グループとしては構造改革の一環であり、財務を整理して次に進むための処理です。一方、RIZAPのパーソナルトレーニングを検討している個人の立場からすると、自分が契約しようとしている事業体が、グループから支援を受ける側だったということになります。
2027年3月期に何をしようとしているか
会社が公表している次期の計画は、かなり積極的です。契約を検討する側から見ても、無関係ではありません。
- 年間150億円超の投資
- 国内650店舗・海外150店舗、最大800店舗の出店
- 女性専用chocoZAPを最大300店舗
- 既存店舗の最大1,900店舗をリニューアル。マシン・サービスを2万台規模で拡充
- AI店長・AIトレーナーの導入。高性能AIカメラとIoT機器を活用
- 香港・台湾への海外展開加速
香港のchocoZAPは2026年5月末時点で19店舗まで拡大しており、日本より広い店舗面積を生かした結果、会員数は日本の1.4倍、客単価は1.8倍、収益力は2.5倍と説明されています。2027年3月期には最大100店舗まで拡大する計画です。
国内はフランチャイズにも踏み込みます。直営とFCの二刀流で国内8,000店舗を目指すとしており、FC事業への問い合わせは2026年1月末時点で1,682件。この加盟条件の実際についてはチョコザップのフランチャイズは儲かるのかで調べました。
株主還元では、自己株式取得枠26億円を設定。2027年3月期の配当予想は連結配当性向20%を目安として1株1.34円〜1.84円、親会社の所有者に帰属する当期利益は40億〜60億円を見込んでいます。
この計画が意味すること
読み方は2通りあります。
ひとつは、回復に自信があるという表明です。実質無借金で現金290.67億円を確保した状態から、150億円超を投じる。財務的な余裕がなければできない判断です。
もうひとつは、利益の作り方が変わるということです。2026年3月期の増益はコスト削減で作られました。しかし2027年3月期は出店とリニューアルに投資する。投資が回収できなければ、コスト削減で作った利益は再び圧迫されます。会社の営業利益予想が120億〜160億円と幅を持たせているのも、この不確実性を反映していると読めます。
ここでも、パーソナルジムのRIZAP本体に関する記述はほとんど出てきません。投資も出店も、その大半がchocoZAPに向けられています。マンツーマンのパーソナルトレーニング事業をどう伸ばすかは、公表資料の中心にありません。
「やばい」が検索され続ける理由
数字を見る限り直近は改善しているのに、なぜこのキーワードが検索され続けるのか。
ひとつは、過去の実績です。8期ぶりの復配ということは、7年以上配当がなかった。その間に何があったかを覚えている人が一定数います。
もうひとつは、売上が減り続けていること。2026年3月期の売上収益は前期比2.2%減でした。利益は6倍になりましたが、これはコスト削減と効率化によるものです。会員数は減少したものの集客と運営効率が改善した、と会社自身が説明しています。
「利益は出ているが、売上は縮んでいる」という状態は、健全化の途中とも読めるし、事業が縮小しているとも読めます。どちらの読み方も、同じ数字から導けます。
そして3つ目に、chocoZAPの評判がRIZAPブランド全体に影響していること。無人運営に伴う設備や清掃の問題は各所で指摘されており、店舗によって設備が大きく異なる実態についてはチョコザップの口コミ・評判で調べています。ブランド名が同じである以上、印象は分離されません。
契約者として、実際に見るべき数字
ここまでは会社の話です。個人が高額契約を結ぶかどうかを判断する際には、別の数字を見る必要があります。
1. 総額と、支払いが終わる時期
コース料金だけでなく、入会金・分割手数料を含めた総額です。3ヶ月で50万円台、半年で100万円台に届きます。詳細はライザップの値段が20万円変わる理由で整理しています。
会社の経営状態を気にするなら、支払いが完了するのが何ヶ月後かを確認してください。分割払いは、サービスが終わった後も支払いが続く構造です。
2. 前払いした分がどうなるか
万一のとき、前払い金がどう扱われるかは契約書の条項によります。特定商取引法の対象となる継続的役務提供にあたる場合、中途解約と返金のルールが定められています。解約時の実務についてはライザップは本当に全額返金される?で扱いました。
3. そもそも自分に必要か
経営の話とは別に、この金額を払う必要があるのかという問いは残ります。ジムを契約した人の多くが目標に届かないまま離脱する構造についてはなぜ多くの人がダイエットに失敗するのかで書きました。会社が存続するかどうかより、自分が続けられるかどうかのほうが、確率的にははるかに大きな問題です。
向き不向きの判断軸はライザップをやめた方がいい人・本気で通うべき人にまとめています。
他のブランドと比べてどうか
上場していない同業他社は、決算を公開していません。つまり、RIZAPだけが経営状態を確認できるという状況です。
これは皮肉な話で、「経営やばい」と検索されるのは、情報が開示されているからでもあります。非公開企業の財務状態は、そもそも検索しようがありません。
パーソナルジムの撤退・閉店は実際に起きています。2021年に伸びていた5ブランドがその後どうなったかはパーソナルジムの拡大と撤退で追跡しました。市場全体の構造としては、参入が容易で生存が難しい状態が続いています(参入は簡単、生存は難しい)。
上場企業で、営業利益が6倍になり、実質無借金で、復配した会社。この条件を満たすパーソナルジム運営企業は、他にほとんどありません。
結論
質問に戻ります。ライザップの経営はやばいのか。
2026年3月期の決算数字を見る限り、短期的な倒産リスクを示すものは出ていません。営業利益は約6倍、現金及び現金同等物は290.67億円、8期ぶりに復配。実質無借金経営という説明もされています。
ただし、以下の3点は事実として押さえておいてください。
- 売上収益は前期比2.2%減。利益はコスト削減で作られている
- 利益の50%超はchocoZAP事業。パーソナルジムのRIZAP本体ではない
- 2025年5月にRIZAP株式会社への債権放棄が開示されている
「グループは持ち直したが、パーソナルジム事業そのものが牽引しているわけではない」というのが、数字から読み取れる状態です。
そのうえで契約するかどうかは、経営リスクよりも、自分がその金額と期間に見合う結果を出せるかで判断すべきだと思います。会社が5年後にあるかどうかより、自分が3ヶ月通い続けられるかのほうが、はるかに不確実です。
情報源
- 2026年3月期 連結業績:RIZAPグループ株式会社(東証グロース・2928)決算短信、2026年5月14日発表
- 2026年3月期 第1四半期 連結業績:同社四半期決算(IFRS)、2025年8月14日発表
- 2026年3月期 第3四半期 連結業績:同社四半期決算、2026年2月12日発表
- 債権放棄に関する開示:2025年5月15日付
数値はいずれも会社が公表した資料に基づくものです。本記事は投資判断を目的としたものではなく、パーソナルジムの契約を検討する読者に向けて、公開情報を整理したものです。最新の開示内容はRIZAPグループ公式サイトのIR情報でご確認ください。
本記事の執筆時点は2026年8月24日です。決算は四半期ごとに更新されるため、契約前には最新の開示をご確認ください。
