ジムのフランチャイズに加盟するとき、本部から渡される資料には、いろいろな数字が並びます。
商圏人口。競合店の数。想定売上。初期費用。
ただ、そこに載っていない数字があります。その街の人口が、これから何人減るのかです。
契約期間は7年が一般的です。いま契約すれば、満了を迎えるのは2030年代の前半になります。そのとき、その街には何人が住んでいるのか。
全国5,939店の位置を調べ、国立社会保障・人口問題研究所の推計と突き合わせました。
結論|ジムがない街は、6年後に人口が15%減る
| 2030年(6年後) | 市区町村 | 人口の減り方 |
|---|---|---|
| ジムがある街 | 819 | −3.9% |
| ジムがない街 | 910 | −14.7% |
| 全国 | 1,729 | −4.8% |

3.8倍の差があります。
もっと先も見てみます。
| 時点 | ジムがある街 | ジムがない街 | 差 |
|---|---|---|---|
| 2030年(6年後) | −3.9% | −14.7% | 3.8倍 |
| 2040年(16年後) | −9.0% | −28.2% | 3.1倍 |
| 2050年(26年後) | −14.9% | −40.6% | 2.7倍 |
意外なことに、先の年になるほど差は縮まります。遠い未来より、近い6年後のほうが、はっきり分かれている。
つまり、いま起きていることです。
ジムがない街は、日本の半分にある
全国1,729市区町村のうち、910市区町村(52.6%)にジムが1店もありません。
対象は、コンビニジム(chocoZAP)、24時間ジム(エニタイム)、女性専用(カーブス)、ホットヨガ(LAVA)、総合スポーツクラブ(ルネサンス)の5ブランド。合わせて5,939店です。
半分の街にない。ただし、そこに住んでいるのは全国の8.1%にすぎません。
- ジムがある819市区町村:1億1,590万人
- ジムがない910市区町村:1,025万人
「半分の街にジムがない」と「9割の人にはある」が、同時に成り立っています。
人口10万人以上でジムがない街は、1つもなかった
ジムがない910市区町村を、人口規模で並べました。
| 人口 | ジムがない市区町村 |
|---|---|
| 1万人未満 | 512 |
| 1万〜3万人 | 345 |
| 3万〜5万人 | 49 |
| 5万〜10万人 | 4 |
| 10万人以上 | 0 |
10万人以上の街で、ジムが1店もないところはありませんでした。5万人以上でも4市だけです。
その4市は、熊本県天草市(7.6万人)、茨城県常総市(6.1万人)、宮城県栗原市(6.5万人)、岩手県滝沢市(5.6万人)でした。
ジムがない街の94.2%が、人口3万人未満です。
ここまでを見る限り、事業者の出店判断は、いまの人口に対してかなり正確です。「見落とされている街」を探すつもりで調べましたが、見落としはほとんどありませんでした。
ただし、出店した街の中にも傾斜がある
問題はここからです。
ジムがある819市区町村を、2030年までにどれだけ人口が減るかで5つに分けました。
| 2030年までの減り方 | 市区町村 | 店舗数 | 人口1万人あたりの店舗数 |
|---|---|---|---|
| 増加する | 123 | 1,677 | 0.66店 |
| 0〜5%減 | 205 | 2,402 | 0.53店 |
| 5〜10%減 | 234 | 1,338 | 0.45店 |
| 10〜15%減 | 161 | 397 | 0.35店 |
| 15%以上減 | 96 | 125 | 0.30店 |

人口が減る街ほど、店舗の密度が下がります。増える街では1万人あたり0.66店、15%以上減る街では0.30店。2.2倍の差です。
事業者は、減る街を避けているわけではありません。出してはいるが、薄くしか出していない。この差は、意図的に作られた結果と見るのが自然です。
それでも、6年で1割減る街に522店が建っている
2030年までに人口が10%以上減る街に、いま522店があります。全体の8.8%です。
どこにあるか、店舗数の多い順に並べます。
| 市区町村 | 2020年人口 | 2030年人口 | 減り方 | 店舗数 |
|---|---|---|---|---|
| 長崎県 長崎市 | 409,118 | 362,388 | −11.4% | 19 |
| 青森県 青森市 | 275,192 | 243,430 | −11.5% | 12 |
| 北海道 函館市 | 251,084 | 216,113 | −13.9% | 11 |
| 山口県 下関市 | 255,051 | 222,393 | −12.8% | 9 |
| 広島県 呉市 | 214,592 | 180,931 | −15.7% | 8 |
| 大阪府 門真市 | 119,764 | 106,809 | −10.8% | 8 |
| 大阪府 松原市 | 117,641 | 105,784 | −10.1% | 8 |
| 長崎県 佐世保市 | 243,223 | 214,031 | −12.0% | 7 |
| 宮城県 石巻市 | 140,151 | 122,272 | −12.8% | 6 |
並んでいるのは、小さな町ではありません。長崎市40万人、青森市27万人、下関市25万人。どれも県内の主要都市です。
大阪府の門真市と松原市も入っています。都市圏の中でも、減る自治体は減ります。
「田舎だから危ない」という話ではない、ということです。
chocoZAPは、拡大するほど「縮む街」へ向かっていた
もう1つ、出店の順番を調べました。
chocoZAPは2022年から出店を始め、2023年に1,009店を一気に開いています。開業年ごとに、出店先がどんな街だったかを見ました。
| 開業年 | 店舗数 | 人口が20%以上減る街(2050年)への出店 |
|---|---|---|
| 2022年 | 216 | 8.3% |
| 2023年 | 1,009 | 22.2% |
| 2024年 | 553 | 18.1% |
| 2025年 | 58 | 36.2% |
| 2026年 | 182 | 26.9% |
初年度は8.3%だったものが、2025年には36.2%になっています。
理由は単純です。条件のいい場所から埋まるからです。最初に出す店は、いちばん人口が多くて減らない場所を選べる。100店目、1,000店目と進むほど、残っている選択肢は狭くなる。
これはchocoZAP固有の問題ではありません。どのチェーンでも、後から加盟する人ほど条件が下がる。そういう構造だ、ということです。
ブランドによって、露出度は3倍違う
5ブランドそれぞれで、人口が減る街にどれだけ店を持っているかを比べました。
| ブランド | 店舗数 | 20%以上減る街の店舗(2050年) |
|---|---|---|
| カーブス | 2,013 | 36.5% |
| LAVA | 458 | 23.1% |
| chocoZAP | 2,018 | 20.4% |
| エニタイム | 1,307 | 19.1% |
| ルネサンス | 143 | 14.7% |
カーブスだけが突出しています。ルネサンスの2.5倍です。
理由は主な利用者にあります。カーブスはシニア女性向けで、30分のプログラムとスタッフ常駐が特徴です。この層は地方に多く、結果として小規模自治体への出店が増えます。
実際、ジムが1つだけしかない370市区町村のうち、306(82.7%)がカーブスでした。地方に最初に入るのはカーブスで、24時間型やコンビニジムは後から都市部に集中している。
これは弱点ではなく、事業モデルの違いです。ただし加盟を検討する側から見ると、ブランドによって前提が違うということになります。
加盟する前に、自分で確認できます
ここで使った将来推計は、誰でも無料で見られます。
国立社会保障・人口問題研究所が「日本の地域別将来推計人口」として公表しており、市区町村ごとの2050年までの推計が表計算ファイルで配布されています。
手順は3つです。
- 「日本の地域別将来推計人口 令和5年推計」で検索する
- 「結果表1 総人口および指数」の表計算ファイルをダウンロードする
- 検討している市区町村の行を探す
2020年の人口を100としたときの指数が、5年ごとに並んでいます。2030年の欄が90なら、6年後に1割減るという意味です。
本部の資料に載っていなくても、自分で1分あれば引けます。
集めたものと、この記事の限界
集めたもの
| ブランド | 店舗数 |
|---|---|
| chocoZAP | 2,018 |
| カーブス | 2,013 |
| エニタイム | 1,307 |
| LAVA | 458 |
| ルネサンス | 143 |
| 合計 | 5,939 |
各社の公式店舗一覧から住所を取得し、市区町村単位に集計しました。政令指定都市の行政区は市に統合しています。将来推計は国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(令和5年推計)」の結果表1を使い、2020年国勢調査を基準としています。
この記事の限界
- パーソナルジムは含みません。個人経営のジム、パーソナルジム、公営施設も対象外です。5ブランドだけの集計です
- いまある店を数えただけです。過去に閉店した店は含みません。どの街で何店が閉じたかは、この集計では分かりません
- 推計は推計です。実際の人口は、企業の進出や住宅開発で変わります
- 福島県の13市町村は対象外です。いわき市・相馬市・南相馬市など浜通り地域の13市町村は、原発事故の影響で個別の推計が行われていません。1つの地域としてまとめて扱いました
- 店舗の密度が低いことは、儲からないことを意味しません。競合が少ないという意味にもなります。本記事は収益性を判定していません
- 奈良県の1市(2店)は、住所の表記から市を特定できず除外しました
データの引用について
この記事の数値・表・図は、出典を明記のうえ自由にお使いいただけます。以下の文をそのままお使いいただけます。
パーソナルジム比較メディア「コーチム」が、フィットネス5ブランド5,939店の所在地と国立社会保障・人口問題研究所の将来推計人口を突き合わせたところ、ジムが1店もない910市区町村は2030年までに人口が14.7%減るのに対し、ジムがある819市区町村は3.9%減にとどまることが分かりました。また、2030年までに人口が10%以上減る市区町村に、現在522店が立地しています。(出典:コーチム「ジム経営で本部が教えてくれない数字」https://coaching-by-web.com/research/gym-population-decline-2030/)
数値の一部だけを引用される場合も、上記のアドレスを出典として明記してください。図はそのままご利用いただけます。
まとめ
5,939店の場所と、将来推計人口を突き合わせて分かったことです。
- ジムがない910市区町村は、6年後に人口が14.7%減る。ジムがある街は3.9%減
- 人口10万人以上でジムがない街は0件。事業者の判断は、いまの人口に対しては正確だった
- ただし、出店した街の中にも傾斜がある。減る街ほど、店舗の密度は薄い
- それでも、6年で1割減る街に522店が建っている。長崎市19店、青森市12店、函館市11店
- chocoZAPは、拡大するほど縮む街へ向かった。8.3%から36.2%へ
本部の資料には、7年後の商圏人口は書かれていません。書かれていないだけで、調べれば分かります。
